510は真面目に考えた。

当店、510のアレルギーに関わる歴史は長く、店長の子供達が生まれた所まで遡ります。

 

店長には3人の子供がおり、その2番目・3番目の息子達が重度の先天性アレルギー体質で生まれてきました。30年前の検査ですが、持って生まれたアレルギーは乳・卵等の多数の食物アレルギー、埃やハウスダストなどの環境アレルギーがあり、これを素因としたアトピー性皮膚炎を発症していました。アレルギーの検査で指標に使われるIGE値と言う値も、当時の検査ではありますが、軽度のアレルギー患者の数十倍の数値が出てしまうほど、重症だったのです。

 

2人の兄弟はアレルギー要因も似ており、食物において肉類では牛・豚・鶏、魚類では青身魚全般、野菜ではじゃがいも・とうもろこし・にんじん・たまねぎ・大豆・その他多数、穀物では米・小麦と、現代において主となる素材がほぼNGと言っても過言ではないほど重度であり、二人とも免疫力が安定しはじめた12歳前後の頃までは「何を食べていたの??」と聞かれるほどの生活を送っておりました。

 

この2人が食べる食料を探す方が難しく、店長は粟・キビ・稗などの雑穀を食べさせたり、肉類では兎・カエル・ラムなど一個づつ子供達の負担にならぬように試しながら、子育てを送っていました。

 

いろいろな食材を試した店長がこの時に気付いたのは、アレルギー要素の食物であっても、同じ食物で症状の出方に多少なりとも違いがある事に気づきました。子供達の体調に現れる症状も違うのです。店長は独学で食物を調べ、根本の素因は同じであるけれども、輸入食材などには運搬時に使用される酸化防止剤などの化学物質に要因があるのではと仮説を立てました。同時に、国産素材でも農薬の使用等、化学薬品を使用して栽培・畜産された食品にも理由があると考えました。

 

結果として有機無農薬野菜や無添加へ食材を変えていった結果、徐々に子供達の状況は改善して行ったのです。

 

そして今から16年前。脱サラしてパン屋を開業した店長は、最初は小売りを中心とした無添加の素材を厳選した美味しいパンを提供していました。この時までは無塩バターを使用していましたので、乳・卵抜きは行っていませんでした。開業から少しすると、とあるお客様から「アレルギーの子供向けのパンはありませんか?」と尋ねられ、オリジナルオーダーで作り始めたのが510の乳・卵抜きのパンの始まりでした。

 

卵アレルギーのお客様でしたが、食べたい食感等を訪ねると、「くちどけが良く、軽い食感の食パンが食べたい」との事でしたので、店長は昔の経験から【万が一他のアレルギーが出てはいけない】、と専用の焼き箱を用意して、紅花油なども考えましたが、アレルギー性が低く輸入品でも基準があるエキストラヴァージンオリーブオイルを使用してパンを作りました。

 

このパンを作った事が、現在の510のパンの始まりとなり、東京都小平市公立保育園から当社パンをご採用頂き、保育園パン納入が始まりました。

 

当初はアレルギーの子供向けだけのご注文でしたが、品質・味・安全性が認められ、徐々に全数を当社のパンに切り替えて頂ける事に。

 

「美味しい!と子供達が言い、残すどころかおかわりをしてくれるのです」

 

アレルギー対応等の特殊性のあるパンは、「味が悪い」というイメージが世間的にあったようですが、当社のパンはおいしいというお声を多数いただくようになりました。受注生産のスタイルのおかげもあり、廃棄ロスの低減にも貢献できました。

 

後に、東京都国分寺市・小金井市・東村山市・東大和市・国立市・立川市・西東京市・武蔵野市・三鷹市の公立、私立保育園様よりご依頼を頂き、現在では200件超(直接・間接契約・業務提携先含む)の保育園様にご納品をさせて頂いております。

 

明確な素材を使い、シンプルにパンレシピを構成し、直感的に美味しく感じるパン。子供達の舌は正直で素直、美味しいと言って頂き、安心して、笑顔で、みんなで食べれるパンを今後も作り続けて行きます。